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『朧の森に棲む鬼』(大阪松竹座) [演劇・ミュージカル]

累々たる屍に埋まる深い森で、野良犬のようにギラギラとした目の男(ライ/市川染五郎)が、突然現れた森の魔物・オボロによって運命を変えられた。
男の武器は、魔物にもらった”オボロの剣”。
そしてありとあらゆる嘘を生み出す、赤い舌。
嘘で染まった真っ赤な舌が、裏切りと憎悪の無間地獄をつくり出し、そして”オボロの剣”が、緑の森に赤い血を降らしていく…。

歌舞伎の世界には「色悪」(いろあく)という言葉がある。
これは敵役の一種で、外見はいい男なのだけれど、女の人を裏切ったり殺人を犯したりなどの悪事を働く冷血な人物のこと。
そんな色悪な男が主人公の舞台『朧の森に棲む鬼』に市川染五郎が主演。
徹底的に悪く、そして美しい男を見せてくれた。

物語の下敷きになっているのはシェイクスピアの『リチャード三世』。
こちらは、巧みな話術と策略で王にまで上りつめる男の物語。
『リチャード三世』との大きな違いは、主人公の容貌。
さらに『朧の森に棲む鬼』では、魔物にもらった”オボロの剣”が主人公を助ける。

市川染五郎の殺陣は流麗でそれは美しい。
オボロの剣がもらいものだったのもあって、剣の動きに体がついていけないところから始まり、のし上がって服装が変わるにつれ、剣さばきも物言いも自信と美しさがどんどんみなぎってくる。
舞台上に繰り広げられる染五郎七変化。
その圧倒的な美しさを見ていると、この人にならば騙されて切られてもいいと、つい妄想モードに…(苦笑)。

その染五郎の弟分に扮するのが阿部サダヲ。
テレビドラマで見る彼は癖のある役が多いけれど、じつはとても器用な役者さん。
歌もうまいし、動きにも切れがある。
所属する大人計画は殺陣があるような劇団じゃないし、子供のころから鍛錬をしてきた歌舞伎俳優・染五郎と並ぶのはなかなか難しいはずなのに、殺陣でもちゃんと阿部サダヲの世界をつくっていた。
染五郎との息もぴったり。

そのほか、国王に田山涼成、その愛妾に高田聖子、王に使える四天王のひとりに秋山菜津子、暗黒街を仕切る盗賊の親玉に古田新太…。
これでもかの芸達者ぞろい。
田山涼成は人のいい優しい国王を好演、高田聖子は女のいやらしさ・いじらしさ・悲しさを表現し(今回は出番が多くてうれしかった)、秋山菜津子は凛としてかっこよくまたもや惚れ惚れ。
古田新太は相変わらず太めだったけれど、新感線の芝居には欠かせない存在。
染五郎との立ち回りは最高の見せ場だった。

物語のテンポもよく、あっという間の3時間。
新感線としてはギャグは控えめで、物語をじっくり味わうかたちの舞台。
今回は2階席だったので、花道を使った演出がいまひとつ楽しめなかったのが唯一の心残り。
もう一度見たかった。
DVDが出たならばたぶん買うと思う(笑)。

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『朧の森に棲む鬼』 icon


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『噂の男』(シアター・ドラマシティ) [演劇・ミュージカル]

大阪の、戦後すぐに立てられた演芸場の地下。
そこにあるボイラー室の点検をするため、ボイラー技師の加藤(八嶋智人)がやってきた。
12年前、人気漫才コンビ・パンストキッチンのひとり、アキラ(橋本さとし)がボイラー室で事故死をして以来、年に一度、点検をするのが劇場の決まりだった。
アキラの死後、酒びたりの日々を送る相方のモッシャン(橋本じゅん)。
パンストキッチンのマネジャーで、いまは劇場支配人におさまっている鈴木(堺雅人)。
売り出し中のピン芸人・ボンちゃん(山内圭哉)。
観客が笑い・拍手する裏側で、それぞれの人物の裏側が露呈していく…。

“いやーな男たちの、いやーなお話”というキャッチフレーズをもつこの舞台。
そうはいっても、脚本が福島三郎ならばそんなに嫌なお話にはなるまいと思ったのが甘かった。
しかも、チケットを購入する前に読んだストーリーとは、かなり展開が違う。
さらに登場人物は男性5人のはずが、中堅の夫婦漫才コンビが増えているし…(これがかなり重要な役どころ)。
観劇前に、誰かの感想を読むなど極力情報を入れないことにしているので、あまりに前情報と違っていて狐につままれる気分に。
人情喜劇を得意とする福島三郎の作風が変わったのか、演出のケラリーノ・サンドロヴィッチが大幅に潤色したせいなのか、本当にいやなお話。
暴力やグロテスクなシーンが含まれていて、長塚圭史が書いたんじゃないかと錯覚しそうなぐらい(苦笑)。

人が簡単に殺したり殺されたりしてしまう今の世の中。
そこまでは行かなくても、ネットのなかにも大小さまざまな悪意がはびこっているのを目にすることがある。
誰がどんな悪意を持っているのか、そしてそれはどの瞬間に噴き出してくるのか、予想することは難しい。
今日は笑って過ごしていても明日はどうなるかわからない。
人の命は、それはそれは軽いものになってしまった。
そんな現実を、演芸場という人々が笑うために集う場所の裏側で、理不尽ともいえる悪意と狂気をちりばめてその対極を表現したかったのだろうか…。
きれい事を求めるつもりはないけれど、そういうのは現実世界だけで十分だなぁ、私は。
W橋本に堺・八嶋と達者な役者陣がそろっているので、芝居としては楽しめたのが救い。

そんな思いを抱きつつも、『直撃! ドラゴンロック~轟天~』以来、約10年ぶりの橋本じゅん&さとしの共演が見られたのは文句なく幸せ。
中川家の台本をもとに繰り広げられるふたりの漫才は、東京公演から熟成されていたのも手伝ってか息がピッタリ。
同じ釜の飯を食ってきた人たちならではの味だった。

そういえばこの漫才のネタもお葬式の話で、死と笑いが隣り合わせになっているんだよねぇ。


タグ:演劇
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『おかしな二人』(兵庫県立芸術文化センター) [演劇・ミュージカル]

脚本家・三谷幸喜が尊敬していると公言してはばからない、アメリカの劇作家ニール・サイモン。
そのニール・サイモンの代表作である『おかしな二人』の女性版を、浅丘ルリ子・渡辺えり子ががっぷり四つに組んだ舞台。

何事にも細かくて神経質なフローレンス(浅丘ルリ子)と、キャリアウーマンだけど大ざっぱなオリーヴ(渡辺えり子)は、ハイスクール時代の同級生。
そんな対照的な性格のふたりが、フローレンスの離婚騒ぎをきっかけに同居することになったが…。

一度見てみたかった『おかしな二人』。
ドタバタしていて、登場人物がどの人も憎めず、最後は前向きに終わる展開は、三谷幸喜の作風にそっくり。
彼がニール・サイモンをめざしているのがよくわかった。

浅丘ルリ子が、”迷惑女”を奇声を発したり大げさな身振り手振りをしたりと熱演。
会場も「あの浅丘ルリ子が」という印象があるのか、よくウケていた。
舞台終盤、白いワンピースに、首とウエストに赤いリボンがついた衣装で登場した浅丘ルリ子。
一定の年代にとっては、いくつになっても「永遠のヒロイン」なんだろう。
相手役を務めた渡辺えり子は、いろいろな意味で貫禄があり、落ち着いて見ていられる女優さん。
舞台の舵取りは彼女が務めていた。

ネタばれになるけれど、最後は「ケ・セラ・セラ」の合唱で幕は下ろされた。
この曲を聞いて、あんなにジーンとしたのは初めて。
”なるようになる””明日のことなどわからない”という歌詞の深さがわかる年ごろになったんだなぁ(苦笑)。
それと、友達は大事にしないと。
私もフローレンスとオリーヴのように、高校時代から、お互いの環境が変わっても仲良くしている友達がいるので。

自分の人生とどこか重ね合わせて見たせいか、コメディとはいえ、いろいろ感じるところのある舞台だった。


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『ライフ・イン・ザ・シアター』(シアター・ドラマシティ) [演劇・ミュージカル]

同じ劇団に所属しているとおぼしきふたりの男優。
ひとりは老境に差しかかりつつあるロバート(市村正親)。
そして、もうひとりは俳優になったばかりの青年・ジョン(藤原竜也)。
そのふたりが、ときに化粧前で、ときに衣装部屋などで会話を交わし…。

1973年に劇団四季で初舞台を踏んだ市村正親と、1998年に『身毒丸』で初舞台を踏んだ藤原竜也の二人芝居。
ベテラン俳優のロバートとそのロバートに憧れをもつジョンという、実際さながらの設定で物語は進んでいく。
ただ「物語」といっても、これといったストーリー展開があるわけではなく、ふたりの役者の芸に対する思いや、少しずつ変化するお互いの関係を、舞台のまわりで行われる会話で表現するかたちをとっている。

市村さんは、劇団四季時代を知っているので、こういった哀愁のある役をするようになったのかと、時が流れているという現実を改めて実感(苦笑)。
去年見た『モーツァルト!』のときも、モーツァルトの父親役と老け役を演じるようになっているのはわかっていたのだけれど…。
今回の役はベテランというだけではなく、若手に追い抜かれる不安や、自分が老い・衰えていくという不安も抱えている役だったので、オーバーに表現すれば衝撃的だった。
役者としてはもちろんすばらしく、老獪さと茶目っけさをたっぷり楽しませてくれた。
対する藤原竜也くんは、まさに「胸を借りる」心境で今回の舞台に臨んだことと思う。
いまの彼の年代ならではのキラキラ感がまぶしかった。
ベテラン・市村の哀愁を際立たせつつ彼自身もきちんと生き、市村さんに見劣りしない存在感はさすが。

老いは誰にでも等しくやってくる。
そのとき、その不安や恐怖をどう乗り越え、自分らしく”美しく”生きていくか…。
等しく避けられない現実なだけに難しい課題なのかも。


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『決闘! 高田馬場』(PARCO劇場+WOWOW) [演劇・ミュージカル]

時は、徳川綱吉が将軍の時代の元禄7年(1694年)、元新発田藩士の浪人・中山(のちに堀部)安兵衛(市川染五郎)は、酒に飲んだくれる無為な日々を送っていた。
そんな安兵衛を心配し、慕う長屋の住人たち(中村勘太郎・市村萬次郎ほか)。
そんな長屋を、安兵衛の叔父を名乗る菅野六郎左衛門(松本錦吾)が訪ねてくる。
六郎左衛門は安兵衛への手紙を長屋の住人たちに託し立ち去るのだが…。

三谷幸喜作・演出によるオリジナルの歌舞伎。
いやぁ、おもしろかった~。
歌舞伎を見てあんなに笑ったのは初めて。
”歌舞伎”らしさを残しつつ、腕はあるのに酒浸りのダメな安兵衛を奮い立たせるという、主人公がけっして「ヒーロー」ではない三谷幸喜らしさを盛り込んだストーリー展開はさすが。
それに、個性豊かな長屋の住人と安兵衛の幼なじみ小野寺右京(市川亀治郎)を絡め、お得意の群像劇の要素もプラスされていて楽しさもてんこ盛り。

それにしても、染五郎さんと勘太郎くんはふた役、亀治郎さんは3役(しかもひと役は女形!)と、それはそれは大忙し。
走るシーンも多く、役者さんたちは舞台上でも裏でも疾走していたことと思う。
今回、亀治郎さんの女形を初めてじっくり見たけれど、福助さんのように美人・女形ではないのに、品があってとてもかわいらしいのにびっくり。
WOWOWの放送では、その決めの台詞のシーンがうまく撮れていなくて残念だったなぁ。
なんて、あんな引きのアングルだったんだろう。
それと、勘太郎くんはお父さん(中村勘三郎)にどんどん似てくるねぇ~。

こういった若手の活躍を見ると、歌舞伎の伝統はこれからも続いていくのだろうと、とても安心できる。
子供のころからずっと基礎を学び続けてきている人たちはやっぱり違う。
そして、染五郎さんの「華」は半端じゃなかった。
新感線の舞台に何度か出演してきた経験もうまく生かされていたと思う。
「PARCO歌舞伎」、数年に一度のペースでいいので、ぜひ続けていってほしい。


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『贋作・罪と罰』(シアターBRAVA!) [演劇・ミュージカル]

ロシアの文豪・ドストエフスキーの名作『罪と罰』をもとに、野田秀樹が描いた『贋作・罪と罰』。
野田版では、舞台をロシアから江戸末期の日本に、主人公を男性から女性に変えて物語を展開している。

時は混乱期の幕末。
江戸開成所の女塾生の三条英(さんじょう・はなぶさ/松たか子)は、「非凡人には法律を踏み越える権利がある」と信じ、金貸しの老女(野田秀樹)を殺害。
さらに、その場に居合わせた老婆の妹をも手にかけてしまう。
正義のためと思いつつ、罪の意識に苛まれる英。
無血による革命、倒幕を志す塾生仲間の才谷梅太郎(古田新太)は、秘かに心を寄せる英の変化に気づき、彼女を屈託なく笑わせたいと温かく接する。
やがて事件を追う捜査官・都司之助(段田安則)の冷静な捜査によって、次第に英は追いつめられ…。

舞台装置がユニーク。
菱形のリングのような舞台を前後の客席で挟むかたちにしつらえ、出演者たちは出番のない間でも、舞台の周囲に置かれたさまざまなイスに腰かけて待機している。
つまり舞台裏がないという斬新さ。
舞台装置そのものもよけいなものは何もない、イスを中心としたごくシンプルなもの。
今回、私に与えられた席は2階の2列目だったため、この舞台を見下ろすようなかたちになり、ときどき見切れてしまったのがとても残念。
しかたのないことだけれど、席の当たり外れってある…。

主演の松たか子は、台詞回しが一本調子なのが前半はどうしても気になってしまった。
それでも、才谷の説得に心を開き己の罪に慟哭する場面での観客の心のつかみ方は鳥肌もの。
さらに、殺陣のときの身のこなしの軽やかさ、正座をしてのお辞儀姿の美しさには、歌舞伎という伝統文化を支える家柄をしのばせ、見ているこちらも背筋が伸びる思いだった。
かたくなな英の心を開かせる才谷役の古田は、包容力が感じられてとても魅力的。
彼にあんなふうに接せられたら、私は堰を切ったように泣いてしまうだろう。

物語の置かれた時代は幕末だったけれど、それよりも「学生運動」が盛んだったころを色濃く髣髴させられた。
終演後にパンフレットを読んで知ったのは、野田秀樹が学生時代に遭遇した出来事が執筆のきっかけになっていたということ。
「志のために人を殺めてもいいのか?」
革命は無血でできればそれに勝るものはないのだけれど…。

iconicon 『解散後全劇作』 icon

iconicon 『罪と罰 上』 icon


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『12人の優しい日本人』(シアター・ドラマシティ+WOWOW) [演劇・ミュージカル]

前夫殺しの容疑をかけられた女性の事件を審議するため、12人の陪審員が無作為に選ばれた。
年齢や性別、それぞれのバックグラウンドも違う12人。
とりあえずの多数決では、全員「無罪」に一致したのだが、ひとりの陪審員がその根拠を正し始める。
すると事態は一転。
審議は混迷の深みにはまっていく…。

『12人の優しい日本人』は、1990年に、三谷幸喜が自身が所属する劇団「東京サンシャインボーイズ」のために書き下ろした作品。
その後、再々演され、91年には映画化もされた三谷幸喜の代表作のひとつ。
それをキャストを一新しての上演。

今回、この舞台を見るに当たって私は、まずCATVで放送された映画版を見直してから劇場へ、さらに、WOWOWでの生中継を見て、最後に三谷幸喜がこのホンを書くきっかけになった映画『十二人の怒れる男』(57年・米)を見るという、1月はかなりの時間を「12人」のために使うスケジュールで臨んだ。
その結果は、どれもおもしろい!
映画版を見るのはこれで何回目かなぁ?
おそらく4~5回は見ていると思う。
映画版と舞台版はほぼ同じ筋運びだったので、ミステリーの要素を含むこの作品を、「ネタばれ」した状態で見ることになる。
それでもおもしろかったのだから、脚本にかなりの魅了があるということなのだろう(もちろん、役者の力量も見逃せない)。
全然チケットがとれなくて一時はどうなることかと思ったけれど、あきらめずに手を尽くしてよかった。
この作品にかかわったすべての人と、あきらめなかった自分に感謝したい(笑)。

それと、映画『十二人の怒れる男』を見ていない方には、こちらもぜひおすすめ。
『十二人~』は、1957年のベルリン国際映画祭・金熊賞受賞作品なのだそう。
三谷版とは違い全編がシリアス。
でも、三谷幸喜が『12人~』のなかでなぜ相撲の話にこだわったのかわかるし、アメリカから日本へ、そしてシリアスから喜劇へと転換した彼のうまさも味わえるはず。
もちろん、ひとつの映画としても名作。

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『12人の優しい日本人』 icon

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『十二人の怒れる男』 icon


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初観劇! [演劇・ミュージカル]

年が明けてまだ間もないけれど、週末は2006年最初の観劇に行ってきた。
見てきたのは三谷幸喜脚本・演出の『12人の優しい日本人』。

これがまたチケットがとれなくてとれなくて大変だった。
複数の先行販売と複数の一般発売と追加発売に破れ、けっきょく手に入れられたのは当日券の前日電話予約。
三谷人気というか『12人~』人気をあらためて見せつけられた感じ。
平日の夜ならとれるかなぁと思ったんだけどなぁ。
全然かすりもしない(苦笑)。
東京公演を見ようとしていた友人はけっきょく見られずじまいだし。
それなのに、オークションにはたくさんチケットが出ているんだから頭に来る。
Yahoo!も、楽天みたいに興行チケットの取り扱いはやめてほしいなぁ、本当に。

話を舞台に戻すと、当日券扱いだったので、行ってみると席は最後列のさらに後ろに置かれたパイプ椅子だった。
でも、もう見られただけで大満足。
おもしろかった~。
15年ぐらい前に書かれた脚本なのにまったく色あせない。
あきらめずに電話してみてよかった。

それと、舞台の感想からはちょっと脱線しちゃうけど、驚いたのは江口洋介のかっこよさ。
衣装は細身の黒いスーツと、けっして特別なものじゃないのに立ち姿がものすごくかっこいい。
脚が長くて顔が小さい!
神に選ばれし人。
想像以上の素敵さに、舞台の中身とは関係なく感動してしまった(笑)。

このほか『12人の優しい日本人』のもう少し詳しい感想は、WOWOWの生中継を見てからということで~。


『エビ大王』(シアターBRAVA!) [演劇・ミュージカル]

2005年最後の観劇は、筧利夫が新たに立ち上げたプロジェクト「Team ARAGOTO」による『エビ大王』。
原作は、2002年ソウル公演芸術祭作品賞、戯曲賞を受賞した作品。

古代朝鮮を統治するエビ大王(筧利夫)は王の座を譲れる男子の誕生を願うが、生まれるのは女子のみ。
7番目に生まれた子供も女子とわかり、この娘(成長後・サエコ)を川に捨ててしまう。
ある日、天の使者(橋本じゅん・河原雅彦)から死期を告げられる大王。
どうしても息子を授かりたい大王は、使者と奇妙な取引を結んだ。
王の代わりに、連日倍々ゲームで国民が死ぬ。そうすれば大王の寿命は延びると…。

筧利夫は、やっぱり舞台のほうが魅力的な人だと思う。
エゴの塊の愚かな王をときに激しくときにせつなく演じ、存在感たっぷり。
複雑な運命を背負った娘役のサエコは、これが初舞台なのだとか。
難しい役を体当たりで頑張っていて好感がもてた。
その娘の夫役としては佐藤アツヒロが登場。
劇団☆新感線などの舞台で鍛えられているから、立ち回りがあっても安心して見ていられた。
どんどんいい舞台役者になっていくよねぇ。
そして、エビ王の6番目の娘役の佐田真由美のスタイルのいいこと!
今回、メインの男優さんがわりと小柄なのもあって、そのスタイルの良さがとても際立っていた。
あれなら、花沢類が惚れるのも無理ないや(笑)。
さらに忘れてはいけない天の使者を務めた橋本じゅん・河原雅彦の天下無敵のコンビ。
この天の使者は、シェイクスピアの『真夏の夜の夢』でいえばパックのような存在。
物語の大事なキーマンであり、引っかき回し役であり、重い筋運びの中でひと息つける存在であり…。
かなり自由にやっていたようだけど、原作ではあそこまで自由じゃないように思うんだけどどうなんだろう。

ところで、私が見たのは大楽だったので、カーテンコールのときに「かっぱえびせん」(『エビ大王』のタイトルにちなんで)に出演者のサインが入ったものが配られた。
私がいただいのが、エビ大王の妻と、捨てられた娘を育てた老婆のふた役をこなした円城寺あやさんのもの。
2005年最後の観劇にラッキーなことがあってうれしい。
もったいなくて食べられないなぁ(笑)。


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『吉原御免状』(梅田芸術劇場) [演劇・ミュージカル]

「いのうえ歌舞伎」と銘打つ、劇団☆新感線プロデュースの舞台。
今回はその「いのうえ歌舞伎」としては初めての小説が原作。
脚色は、もちろん座付き作家の中島かずき。

剣豪・宮本武蔵に育てられた若武者・松永誠一郎(堤真一)は、武蔵の遺言により、生まれ育った肥後の山中を下り、江戸の遊郭・吉原にやってきた。
そのかかわりから、誠一郎自身の出生の秘密や吉原そのものの秘密が明らかになっていく。

隆慶一郎の同名原作は途中まで読んだところで、舞台に臨むことに。
というのも、結末がわかってしまうのはちょっともったいない気もしたので。
遊郭・影武者…、これまでの「いのうえ歌舞伎」と根っこがつながるものをよく探して当てたなぁと思ったら、中島かずきは、これまでの作品でも隆慶一郎にリスペクトされた部分があったのだそう。
ネタ的なシーンがなくこれまでの新感線とはだいぶイメージが違うようで、そう違和感を抱かなかったのはこの作品を原作に選んだためなのだろう。

松永誠一郎役の堤真一は、山育ちで木訥としているけど、どこか品のある26歳(!)を予想以上にさわやかに演じきっていた。
脱いでも若々しいし。
同じ新感線のものでも『野獣郎見参』とはまったく違う雰囲気。
そして、誠一郎を敵視する「裏柳生」の総帥・柳生義仙(古田新太)との殺陣がなんといってもすばらしい。
古田ファンとしても大満足の出来。

物語のキーパーソンとして登場する吉原の重鎮・幻斎役の藤村俊二は、原作を読んだかぎりではイメージが違うような気もするけれど、あの独特の飄々とした雰囲気は誰にもまねできないものだと思う。
まさに「おひょいワールド」。
花魁・勝山太夫役の松雪泰子はやっぱりキレイ!
舞台出演は2作目とのことなので、台詞はときどき聞きづらいところがあったけれど、あの存在感と美しさはそうそう出せるもんじゃない。
カーテンコールでの罰ゲームでは一転してかわいらしかったし。
キャリアを重ねていけば、さらにいい女優・いい女になるんだろうなぁ。
うらやましかった(笑)。

ひとつ残念だったのは、吉原で弦斎を補佐する役だった逆木圭一郎さんの怪我による降板。
逆木さんが抜けた穴はほかの出演者で台詞を割り振って埋めたようだけれど、老け役で殺陣をする人がいなくなってしまったので、吉原のバックグラウンドへの説得力が少し薄くなってしまった。

舞台を見終えてから、改めて原作を最後まで読み進めてみた。
「ありんすえ」などの廓言葉はなぜ生まれたのか?
この一冊で吉原に対する印象がずいぶんと変わってしまった。
謎解きとしてもおもしろい小説。
続編の『かくれさと苦界行』も読んでみようかなぁ。


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