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『贋作・罪と罰』(シアターBRAVA!) [演劇・ミュージカル]

ロシアの文豪・ドストエフスキーの名作『罪と罰』をもとに、野田秀樹が描いた『贋作・罪と罰』。
野田版では、舞台をロシアから江戸末期の日本に、主人公を男性から女性に変えて物語を展開している。

時は混乱期の幕末。
江戸開成所の女塾生の三条英(さんじょう・はなぶさ/松たか子)は、「非凡人には法律を踏み越える権利がある」と信じ、金貸しの老女(野田秀樹)を殺害。
さらに、その場に居合わせた老婆の妹をも手にかけてしまう。
正義のためと思いつつ、罪の意識に苛まれる英。
無血による革命、倒幕を志す塾生仲間の才谷梅太郎(古田新太)は、秘かに心を寄せる英の変化に気づき、彼女を屈託なく笑わせたいと温かく接する。
やがて事件を追う捜査官・都司之助(段田安則)の冷静な捜査によって、次第に英は追いつめられ…。

舞台装置がユニーク。
菱形のリングのような舞台を前後の客席で挟むかたちにしつらえ、出演者たちは出番のない間でも、舞台の周囲に置かれたさまざまなイスに腰かけて待機している。
つまり舞台裏がないという斬新さ。
舞台装置そのものもよけいなものは何もない、イスを中心としたごくシンプルなもの。
今回、私に与えられた席は2階の2列目だったため、この舞台を見下ろすようなかたちになり、ときどき見切れてしまったのがとても残念。
しかたのないことだけれど、席の当たり外れってある…。

主演の松たか子は、台詞回しが一本調子なのが前半はどうしても気になってしまった。
それでも、才谷の説得に心を開き己の罪に慟哭する場面での観客の心のつかみ方は鳥肌もの。
さらに、殺陣のときの身のこなしの軽やかさ、正座をしてのお辞儀姿の美しさには、歌舞伎という伝統文化を支える家柄をしのばせ、見ているこちらも背筋が伸びる思いだった。
かたくなな英の心を開かせる才谷役の古田は、包容力が感じられてとても魅力的。
彼にあんなふうに接せられたら、私は堰を切ったように泣いてしまうだろう。

物語の置かれた時代は幕末だったけれど、それよりも「学生運動」が盛んだったころを色濃く髣髴させられた。
終演後にパンフレットを読んで知ったのは、野田秀樹が学生時代に遭遇した出来事が執筆のきっかけになっていたということ。
「志のために人を殺めてもいいのか?」
革命は無血でできればそれに勝るものはないのだけれど…。

iconicon 『解散後全劇作』 icon

iconicon 『罪と罰 上』 icon


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