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『ムサシ』(シアター・ドラマシティ) [演劇・ミュージカル]

小説家でもあり、劇作家でもある井上ひさしといえば、遅筆で有名。
それゆえ、彼が主宰するこまつ座の公演が順延や休演となったのは、一度や二度ではない。
その井上ひさしの新作書き下ろしとなる舞台が『ムサシ』。
剣豪として名高い宮本武蔵を主軸に添えた作品。
幸い、今回は予定通りに幕が開いたわけだけれど、最終的に脚本が仕上がったのは、初日の数日前だったらしい…。

musashi.jpg慶長17年(1612年)、豊前・小倉沖の舟島で相まみえたふたりの剣豪・宮本武蔵(藤原竜也)と佐々木小次郎(小栗旬)。
勝負は一撃で決まり、勝ったのは武蔵。
のちに「巌流島の決い」と言われるこの大一番から6年の月日が流れ…。

元和4年(1618年)、鎌倉の宝連寺では寺開きの参籠禅(さんろうぜん)が執り行われようとしていた。
集っていたのは、大徳寺の長老・沢庵(辻萬長)、将軍家平方指南役・柳生宗矩(吉田剛太郎)、寺の檀家である木屋まい(白石加世子)と筆屋乙女(鈴木杏)、宝連寺の住持・平心(大石継太)、そして寺の作事を務めた宮本武蔵。
ところがそこへ、奇跡的に一命をとり留めた佐々木小次郎が登場。
武蔵憎しの一念で武蔵を追いかけてきた小次郎は、「果たし状」を突きつける。
かくして、武蔵と小次郎という二大剣客の再対決が3日後と約束されるのだが…。


藤原竜也と小栗旬。
ふたりの人気俳優の共演が話題となっていたこの舞台。
ふたりは声質が似ているじゃないかとつねづね思っていたので、共演したらどんな化学反応を起こすのかにまずは注目。
実際にふたりを並べてみると、確かに声は似たタイプ。
でも、醸し出す雰囲気は意外と違っていて、スマートさが漂う小栗旬に対して藤原竜也はどこか不器用。
そのふたりのキャラクターの違いを井上ひさしが当て書きでうまく引き出し、それぞれの個性のぶつかり合いを演出。
ふたりとも人気があるのはやはりダテではなく、芝居はもちろんきちっとしているのだけれど、放つオーラが半端じゃない。
そろって舞台前面に出てきたときなど、まぶしすぎて思わずめまいが…。

ミーハー全開はこのぐらいにして(苦笑)、藤原・小栗以外では、数年ぶりに舞台上の姿を見た鈴木杏の成長ぶりに感動。
いい声が出ていてとても台詞が聞きやすく、井上・蜷川の信頼も厚いようで、物語の肝となる台詞を任されていた。
10代から20代になった彼女は、着実に進化しているよう。
若手3人をがっちりサポートするのが、白石加世子・辻萬長・吉田剛太郎のベテラン。
ここに、蜷川作品を中心に活躍している大石継太が狂言回しとして絶妙の立ち位置を確保。

物語のほうはというと、剣豪ふたりがそろっているのだから活劇なのかと思えば、予想に反して展開されたのはあえて表すのならば会話劇。
剣を使う場面はあるにはあるけれど、それはほんのエッセンスにすぎない。
修行の一環として行われる男性5人による組んずほぐれつの五人六脚や、小次郎指導の下に行われたすり足の稽古がタンゴ風の群舞に変わるなど、会場を笑いの渦に巻き込むシーンを織り交ぜつつ、武蔵と小次郎の再対決へと時間が進んでいく。
ふたりの決闘の結末はいかに?

戦うとは、生きるとは、そして恨みの連鎖はどうすれば断ち切れるのか…。
有史以来、いやそれ以前から続く避けては通れないテーマに、「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく」を旨とする井上ひさしの筆が冴えわたる。
それに呼応するように、蜷川幸雄が用意した舞台も奇をてらったものではなく、鎌倉の風を感じさせる幽玄なもの。
ともに70代の井上&蜷川の新作。
表に出ている役者だけでなく、裏で操る彼らの底知れぬパワーに感嘆し、勇気すら得られてしまうのは、これぞ生の醍醐味なのだろう。

WOWOW
『ムサシ』WOWOWで7月18日放送決定!


タグ:演劇
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犀川

小栗旬・・・何となく気になります・・・ミハーです(^_^;)
by 犀川 (2009-06-04 19:09) 

pica

これ、観たいんですよ~~~☆
でも、チケットが、チケットが、チケットが(><)
やっぱり、小栗VS藤原は興味津々なのです。

なに!WOWOWで!
素敵な情報、ありがと~~~~~!
早速、スケジュールに登録します!
by pica (2009-06-04 21:38) 

mikanpanda

*犀川さん*
小栗くん、ドラマで見てもいつも雰囲気を変えてくるし、私も気になる俳優さんのひとりです。
ミーハー仲間ですね!(笑)

nice!もありがとうございました。(^^)/

*picaさん*
私のまわりでも、みなようやっとチケットを入手という感じでしたよ~。
WOWOWを見られる環境ならばぜひチェックしてくださいね!
そんなこともあろうかと(笑)、公演は終わっているけれど、極力ネタばれは避けて書いてありますので。

nice!もありがとうございました。(^^)/
by mikanpanda (2009-06-07 23:18) 

理恵

あっ、わたしが3月に見た奴(笑)
(チケット取れずに当日券で)

しかも杏ちゃん狙いの変な奴(ぷっ)>わたし
秋の『奇跡の人』も楽しみ♪
(杏ちゃんの舞台デビューの作品に、今度は
サリバン先生役で出演。)

そうそうWOWOWでやるんですねー。
できればもう一度見たい……
by 理恵 (2009-06-08 09:12) 

pica

>極力ネタばれは避けて書いてありますので
  WOWOW、観れます!配慮に感謝です☆
by pica (2009-06-08 23:40) 

mikanpanda

*理恵さん*
5月だったんですよぉー、私が見たのは。
けっこうタイムラグがありますよね。(^0^;)

サリバン先生って、じつはヘレンのところに来たときは20歳ぐらいと若いんですよね。
杏ちゃんにはぴったりの役だと思います♪

nice!もありがとうございました。(^^)/

*picaさん*
映画と演劇のことを書くときは、結末は書かないことにしています。
まったくネタバレなしとはさすがにいかないけれど、極力抑えめがモットーです。(^^ゞ
by mikanpanda (2009-06-10 15:22) 

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