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『グッドナイト スリイプタイト』(サンケイホールブリーゼ) [演劇・ミュージカル]

2009年最初の観劇は、三谷幸喜の新作『グッドナイト スリイプタイト』。
会場はこちらもできたてで、2008年11月にオープンしたサンケイホールブリーゼ。
初めて足を踏み入れたサンケイホールブリーゼは、壁も床も座席もすべて黒で統一。
座席数は900ほど。
今回は2階席(しかも中ほど)だったのだけれど、ステージとの距離をあまり感じなかったので、どの席でもわりと見やすい造りになっているよう。

goodnight.jpg結婚30年を迎えた50代のふたり(戸田恵子・中井貴一)。
彼らはこれまでの生活にピリオドを打ち、別々の道を歩むことを決意していた。
ふたりが住んでいた都内のマンションは、作曲家である夫のものに。
マンションから出ていく妻は荷物整理の真っ最中。
そのなかに、新婚旅行で出かけたタヒチの思い出の品が紛れていた。
思い出話に花を咲かせるふたり。
ところが、楽しかったはずの新婚旅行なのに、そのときの記憶はふたりのなかで微妙に食い違い…。


登場人物は夫と妻だけという二人芝居。
「ぐっすりおやすみ」という意味のタイトルどおり、寝室での夫婦の会話だけで進む。

まずは開演5分前の1ベルのあとに、三谷幸喜のアナウンス(テープ)が流れる。
ここで予告するどおり、劇的な出来事は劇中にほとんど起こらない。
新婚旅行先で時差ボケで眠れなかったり、妻が服選びに悩んでなかなか出かけられなかったり、ささいなことでケンカをしたり…。
夫婦だけに通用する端から見ればバカバカしい会話も含め、どこの家庭でもありそうなエピソードが笑いを誘う。
それがじつは伏線。
夫婦の現在と過去を行き来することで、ひとつひとつの点が線となり、やがては面へと変わっていく。
結婚30年で別れを決めたふたりの「終わりの始まり」へとたどりつく物語。

この夫婦には子供がいない。
ふたりの生活に途中から加わるのがペットのタロウ。
夫婦とペットという家族構成も含めてあまりに自分と共通点が多く、最後は笑っていられなかった(苦笑)。
胸の奥の引き出しにギュウギュウに詰めて、見なかったことにしていたものを、あらためてずらっと並べられたようで…。
どこの夫婦でも、相手に対して大なり小なり不満はあるだろう。
それはお互いさま。
でも、それが少しずつ重なり合って、気持ちに大きな揺さぶりをかけることがないとは、誰にも言い切れないはず。

戸田恵子は、小さくて細い体のどこにあのパワーが潜んでいるんだろう。
芝居も歌もうまい(もともとは歌手)、すてきな女優さん。
あんな50代になりたいと思える人。
中井貴一も弾けた演技で、芝居巧者・戸田恵子に呼応。
そのふたりを盛り上げるのが、舞台下手端に控えるフルート、オーボエ、クラリネットの木管3本とピアノによる4人の音楽ユニット。
音楽隊の皆さんはBGMだけでなく、波の音・電話の音など効果音としても大活躍。
生演奏で芝居を大いに盛り上げていた。
それからサプライズ出演の三谷幸喜!
大阪公演にはさすがに来ないかと思ったら、いたいた(笑)。
音楽隊にリコーダーとして混じり、ワンシーンだけ出演。

この世の中、永遠なんてものはない。
とくに別れてしまえば他人になってしまう夫婦の関係はヤワだ。
だからこそ、おもしろいのかもしれないけれど。
なんだか三谷幸喜に、今後の宿題を出されたような気がした…。


ネタバレ
夫妻が飼っていたペットとは…(→)

タグ:演劇
nice!(4)  コメント(6) 
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コメント 6

pica

おおー、観にいったんですね!
いいなぁ。

ウチもコドモがいないので(ペットもいないけど)
ちょっと気になる設定なんですよ。
宿題、片づけられるかな、私。
by pica (2009-01-19 02:36) 

あぁ

うわ~きつい内容です。
相手の欠点も面白いと思える日もあれば
イライラする日も。
面白いと思う日を多くしていきたいわ。
by あぁ (2009-01-19 03:26) 

理恵

わたしは、去年クリスマスにPARCO劇場で
観てきました。
ただねー、一緒に行ったお友達もわたしも
夫婦だけ子供無し設定(ただしペット無し)
しかもお友達は不妊治療も経験済み
内容的にキツい所があって(苦笑)

話はよく出来てるし、お2人も上手いし……
なのにアップしそびれちゃいました。


by 理恵 (2009-01-19 18:20) 

mikanpanda

*picaさん*
既婚者じゃないと理解しにくい部分があるかもしれないですねぇ、このお芝居。
逆に既婚者だとわかりすぎてつらくもあり…。(^^;

nice!もありがとうございました。(^^)/

*あぁさん*
おもしろくもあり、きつくもあるお芝居でした。(^▽^;;
欠点があるのはお互いさまですよね。
それをどうすり合わせるかが問題かなぁ。
あとは地雷は踏んじゃいけないと…。

nice!もありがとうございました。(^^)/

*理恵さん*
見に行かれていると思っていましたよぉ~。
私のほうは、クリスマスには『リチャード三世』を見ていました。
これはひとり観劇だったのだけれど、『グッドナイト~』は夫婦で行っちゃいました…。(^◇^;;
ペットが気になって夕飯も早々に家に帰りましたとも(笑)。

よくできたお芝居でしたよね。
相変わらず伏線の張り方もうまいし。
でもblogにアップしそびれた気持ち、よくわかります。

nice!もありがとうございました。(^^)/

by mikanpanda (2009-01-19 20:01) 

ねこかど

ぽん太が産まれるまで、うちも子供なしペットありだったので、きっと同じ舞台でも自分の置かれた状況によって感じ方は変わるかもしれないですね。
夫婦って、小さな不満は必ず溜るものだと思っています。なので、もともと他人だからこそ、それを乗り越えるような思いやりもお互い持ち続けないといけないなぁ、と”心の中”じゃ思ってるんですけどねっ。
興味ある舞台です。
by ねこかど (2009-01-24 15:57) 

mikanpanda

*ねこかどさん*
ある夫婦の30年間を描いたものなので、子供のいるいないにかかわらず、既婚者ならば共感できる部分のある舞台だと思いますよ。
子供なしだと、より切実ではありますが。(^^;

「思いやり」って大切な言葉ですね。
たとえボタンのかけ違いがあっても、思いやりさえ忘れなければ越えてはいけない一線を越えることもないだろうし…。
これは夫婦に限らないことですけどね。
by mikanpanda (2009-01-27 18:20) 

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