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『キャバレー』(大阪厚生年金会館) [演劇・ミュージカル]

ミュージカル『キャバレー』がブロードウェイで初演されたのは1966年。
その後、映画化もされ、世界各国で繰り返し上演されている、傑作といわれているミュージカルのひとつ。
その『キャバレー』に、「大人計画」主宰の松尾スズキが日本語台本と演出に挑戦するという。
数年前に、まったく別の日本人キャスト、演出家はイギリス人というバージョンを見たことがあったので、松尾版の『キャバレー』も味わいたくて劇場へ出かけてみた。

ナチスが台頭し始めた1929年の大晦日、アメリカ人作家のクリフ(森山未來)は、小説執筆のためにドイツ・ベルリンにやってきた。
クリフは、妖しい魅力のMC(阿部サダヲ)と、ショーが人気のキャバレー「キット・カット・クラブ」で、歌姫サリー・ボウズ(松雪泰子)と出会い恋に落ちる。
すぐさま一緒に暮らし始めるふたり。
そのふたりが暮らす下宿の主人シュナイダー(秋山菜津子)は、長年ひとりで生きてきた女性。
そんな彼女も、ユダヤ人の果物商シュルツ(小松和重)と新しい人生を踏み出すことを考えていた。
ところが、ナチスはますます力を増大させ、その思想はドイツで暮らす人々の生活に暗い影を落とし始めていた。
クリフとサリー、シュナイダーにとっても…。


今回はS席を購入したのに、なんと届いたチケットは3階の2列目。
S席で3階って(涙)。
センターブロックだったので全体を見るには見やすかったのだけれど、いかんせん舞台から遠い。
そうなると遠いなりの伝わり方なわけで…。

サリー役の松雪泰子はとても美しいし華もある。
歌もかなりレッスンを積んだのだろう。
でも、残念ながら3階までは彼女の”美女オーラ”は届いてくれず、初ミュージカル出演の稚拙さのほうが気になってしまった。
MC役の阿部サダヲは、キャバレーのMC(司会)と、物語の狂言回し的な存在を兼ねている、虚実が入り交じった難しい役を、彼らしく軽やかに演じていた。
いつもどおり歌も安心して聴ける。

そして、このふたりを押さえて、圧倒的な”女優力”を見せつけてくれたのが秋山菜津子。
彼女が扮するシュナイダーは50代の女性。
秋山さんが演じるには少し年齢が高いんじゃないかと思っていたら、予想を覆してみごとな老けっぷり。
歌声まできっちりと老けさせて聞かせてくれた。
その相手役を務める小松和重は飄々とした感じがいいのだけれど、残念ながら老けきれず。
彼が若く感じられると、年を重ねたふたりが新しい人生を踏み出すことの大変さがどうしても薄れてしまう。
それでも、『キャバレー』というタイトルなのに、キャバレーとは縁のないところに生きる、人生をひと山越えてきたカップルのほうが印象的と、秋山菜津子のひとり勝ち状態だった。

全体としては、しっかりと『キャバレー』を踏襲しつつも、松尾スズキ風味をよくも悪くもふんだんに加えることで、大人計画ファンや『キャバレー』という作品を知らない人でも入りやすいものとなっていた。
松尾スズキはすばらしい才能の持ち主だと思う。
でも、カーテンコールに出てきて、キャバレーのバンドマンたちの生演奏で『妖怪人間ベム』を熱唱しちゃうのはどうなんだろう。
しかも2コーラス(苦笑)。
会場は盛り上がったけれどね(笑)。
重い話を重いまま語れないのは相変わらずのようで…。
それは劇中にもちょこちょこ顔を出していた。

今のところこの『キャバレー』が、私の2007年最後の観劇の予定。
それがしっかりと楽しめきれなかったのはとても残念。
席運の大きさを深く感じてしまった。
松尾作品はWOWOWで放送されることが多いので、そこに期待しようと思う。
画面を通して見たら、また感じ方も違うんじゃないかな。
そんな感想を持たざるをえない3階の席だった(涙)。


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コメント 7

あぁ

ライザ・ミネリ主演の映画「キャバレー」を
観た記憶があるのですが、そんなテーマだったとは。

S席で3階なのか~
by あぁ (2007-11-26 06:04) 

理恵

S席で3階(T-T)
あんまりかも。
キャストは贅沢なのに堪能できないなんて……

秋山さんはやっぱりすごいかぁ……
わたしもたまたま2作品続けて見た事があって、
その違いにすごいなぁと思った事ありです。

今年の予定は終了なの?
そっかぁ
by 理恵 (2007-11-26 10:07) 

ねこかど

S席とA席の境界線って微妙すぎますよねぇ。興行主は少しでもS席で売りたいのでしょうが、これは残念すぎますよね。なんとか考えてもらいたいものです!

話はまったく違いますが、先日のぽちたまスペシャルで秋浜ちゃんと隆浜ちゃんの特集を見ました。mikanpandaさんの記事をきっかけに「かわいいなぁ〜」って思った子たちのことだったのと、飼育員さんのここまで大切に見守ってきた気持ちを考えて泣いちゃいました・・・。
でも、二頭ともすごく多くの人に愛されていたのはとっても嬉しいことでした。中国でも大切にしてもらえますよね!
by ねこかど (2007-11-26 13:52) 

S席で3階ですか?
ちょっと、驚きました(@_@)
by (2007-11-26 18:39) 

mikanpanda

みなさん、nice!をありがとうございました。(^^)/

*あぁさん*
ライザ・ミネリの映画は有名ですよね。
ただ、熟年カップルのエピソードは映画ではないらしいのです。
時代背景などは、もちろん同じだけれど。

*理恵さん*
Sで3階ってあんまりでしょー。(:_;)
しかも大阪厚生年金は、2階・3階の前は手すりで見にくいんですよ。
今回、たまたま1列目が空席だったのでまだましだったけれど、もし人がいたら、遠いうえに見切れると最悪でしたよ。

秋山菜津子さんは私も何作か見ているのだけれど、役によって雰囲気が違いますよね~。
しかも、つねにそれっぽい。
お嬢様から初老までなんでも来いのようでした(笑)。

今年は店じまいが早くなってしまいました。
そのぶん、来年の店開きが早いです。(^^ゞ

*ねこかどさん*
S席ならば、せめて2階の前列までかなぁと…。
3階というのはショックでした。(^^;

『ポチタマ』は私も見ました!
たまたま途中から見たら隆・秋が出てきてびっくり。
そして、私も涙が出ました。(:_;)
見逃さなくてよかったです。

彼らがいる場所は、アドベンチャーワールドからは雄浜(ユウヒン)というコが先に行っていて、元気に暮らしているようです。
隆・秋もきっと大事にしてもらえると思いますよ。(^^)

*犀川さん*
私もチケットを見て驚きました。
歌舞伎などではあえて3階席を選ぶことがあるのですが、そのときはSよりずっとリーズナブルなわけだし…。
by mikanpanda (2007-11-28 12:38) 

映画館の座席によって楽しさも変わりますよね。
by (2007-11-29 11:22) 

mikanpanda

*とわさん*
映画館もあまりにも前の列だったり、前の席の人の座高が高かったりすると見にくいことがありますよね~。
芝居の場合は、映画のように人が大写しにならないので、よけいに席に左右されるんですよォ。

nice!もありがとうございました。(^^)/
by mikanpanda (2007-12-03 11:17) 

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