SSブログ

『かもめ』(シアターBRAVA!) [演劇・ミュージカル]

ロシアの文豪・チェーホフの戯曲『かもめ』を読んだのは、たぶん高校生のときだったと思う。
今回その『かもめ』が、藤原竜也主演で甦ると聞き、最初に頭をよぎったのは「『かもめ』の主演って男性だっけ?」ということ。
ニーナという女性と、そのニーナの「わたしはかもめ」という台詞ばかりが印象的で、ほかの登場人物のことがほとんど思い出せない…。
どうしようか迷った揚げ句、そんなトホホな記憶のまま客席に着くことにした。

kamome.jpg退屈な時代に我慢ができず、前衛的な劇の創作にその不満をぶつけようとしている青年トレープレフ(藤原竜也)は、湖のほとりにある伯父・ソーリン(勝部演之)の田舎屋敷に住んでいる。
そこへ、売れっ子作家トリゴーリン(鹿賀丈史)を連れて、モスクワから大女優である母・アルカージナ(麻実れい)が戻ってきた。
女優を夢見る地主の娘ニーナ(美波)に恋をしているトレープレフは、自作の劇に彼女を主演させ、アルカージナらの前で上演することに。
ところが、アルカージナは茶化すばかりで真剣に取り合わない。

一方、ソーリン家の執事シャムラーエフ(藤木孝)の娘マーシャ(小島聖)は、常に喪服をまといトレープレフを愛しているが、その想いは届かずじまい。
さえない教師メドベジェンコ(たかお鷹)はそのマーシャを愛しているが、マーシャの態度は素っ気ない。
さらに、ニーナはトレープレフの想いに気づいているが、女優として大きく成長しなくてはならないという野心でいっぱい。
そんなニーナの気持ちを受け止めたのは、トリゴーリンだった。
女優としての名声と成功を夢見て、アルカージナとともにモスクワへ帰るトリゴーリンを追ったニーナだったが…。


物語の舞台は19世紀末のロシア。

登場人物のほとんどが誰かに思いを寄せ、それがことごとく相手には受け入れてもらえないために起きる悲劇であり、喜劇。
これに、劇作家をめざすトレープレフと、その母で大物女優であるアルカジーナとの対立。
さらにここに、母の恋人である売れっ子作家のトリゴーリンが絡んでくるわけだけれど…。

達者な役者がそろうなか、とくに印象的だったのはふたり。

まずは麻実れい。
彼女は、宝塚でトップを張っていただけに、華やかで気ままな大物女優にぴったり。
ドレスを着こなすカッコイイ女優さんだった。

もうひとりは、キャスト最年少の美波。
前半は白いドレスを身にまとい、裕福で夢にあふれる娘をまぶしいぐらいに演じ、それが一転、後半は黒い衣装で、夢と現実の狭間に疲れた女性に変貌。
その落差は劇的で、思わず目を奪われた。

ひとつ残念だったのは、30代後半の売れっ子作家としては鹿賀丈史に若さがなかったこと。
台詞に説得力があるし、いい役者さんであるのはまちがいないし、舞台に年齢の嘘はつきものだけれど、大女優の若い恋人には見えなかった。
麻実れいと並ぶとお似合いのふたりになってしまっていて…。
トリゴーリンを、せめて40代の俳優さんが演じることで、トリゴーリンとアルカージナ、トリゴーリンとトレープレフ、トリゴーリンとニーナの関係もまた違って見えたのでは?

舞台を見終わって、高校時代に戯曲を読んだときと同じく、いちばん印象に残ったのはやっぱりニーナだった。
ただ、トレープレフがどんな人物だったかはもう忘れないはず。

自分以外の誰かに認めてもらいたいという気持ちは、誰にでもあると思う。
それが、男性のほうがより切実なのかもしれない。
とくに芸術家肌の人にとっては。
なんだかんだ言っても、女性は強い。

iconicon
『かもめ』 icon

タグ:演劇
nice!(4)  コメント(8) 
共通テーマ:演劇

nice! 4

コメント 8

pica

加賀丈史の30代はちょっとツライかも…。
藤原竜也はどーでした?
なんか、最近ぱっとしない気がして…気になって
いるんですけど。
by pica (2008-08-10 23:57) 

ねこかど

かもめ、読んだことないなぁ。なんとなく戯曲に手が出ないからかもしれないです。でも、面白そうな話ですね!
女性は単体で強く、比べて男性は誰かに認めてもらいたい気持ちが強い、というの・・・そうかもしれないですね。
by ねこかど (2008-08-11 15:28) 

あぁ

このポスターだけでも
ニーナの危うい美しさに目が奪われます。
私は誰かに認められたいというより
近くに理解者がいればそれでいいかな。
by あぁ (2008-08-12 16:21) 

犀川

男性もリタイヤしたら、認められたい気持ちが無くなるかも?
by 犀川 (2008-08-13 16:17) 

mikanpanda

*picaさん*
今回、5列目での観劇だったので、鹿賀さんのことはよけいに気になりました。(^^;

藤原くんは、前半は認めてもらえないもどかしさを表に出したマザコンっぽい青年で、後半は数年たってちょっと大人っぽくなり、そういったもどかしさを奥に秘めた青年に変わっていました。
ニーナほどじゃないけれど、20代前半の数年って雰囲気が変わるものなんだなぁというのをうまく見せてくれていましたよ。
ただ、鹿賀さんとの年齢差がありすぎて、ふたりの関係がいまひとつおもしろくないんですよねぇ。

で、どうだったかに対する答えですが、藤原竜也ファンな私としては、今の彼はちょっと伸び悩み中かなぁという印象をもちました。
ホリプロはちょっと大事に育てすぎじゃないかなぁ。(^^;

彼は、次は蜷川さん演出・井上ひさし脚本の『ムサシ』でタイトルロールを務めます。
共演は小栗旬。
同年代が相手なので、藤原くんも気が抜けないんじゃないかと思うんですけどね。
26ぐらいでまとまっちゃったら、ほんともったいない。

長くてごめんなさい。(^▽^;;
nice!もありがとうございました。(^^)/

by mikanpanda (2008-08-13 22:53) 

mikanpanda

*ねこかどさん*
戯曲って見慣れないとちょっと読みにくいかもしれないですね。
女性のたくましさを感じたお芝居でしたよ。
国や時代は変わっても、それは不変かも(笑)。

nice!もありがとうございました。(^^)/

*あぁさん*
美波ちゃんは、うまさというよりは、若さから来るまっすぐな感じがすてきでした。
ハーフなので、「ニーナ」という名前もそう違和感なかったし。

理解してもらうのもなかなか難しいもんですよねー。(^^;

nice!もありがとうございました。(^^)/

*犀川さん*
リタイアしても、奥様には認めてほしいと思っているかも?

nice!もありがとうございました。(^^)/

by mikanpanda (2008-08-13 23:02) 

pica

再び♪
次回は小栗旬クンと共演!これは興味しんしん。
ふたりとも蜷川作品に出ているし、小栗クンは前から
蜷川氏が期待していた役者だし、観たいですね!
藤原クンにも意地があるだろうし。
いい意味で競い合って、ふたりが成長してくれると
ウレシイんだけど。
by pica (2008-08-15 01:38) 

mikanpanda

*picaさん*
藤原くんが宮本武蔵、小栗くんが佐々木小次郎。
ふたりの共演は初めてではないけれど、前回は藤原くんがハムレットで小栗くんは最後に出てくるフォーティンブラスだったから絡みはなかったんですよね。
でも、今度はがっぷり組むことになりそうです♪
公演は来年春。
今から楽しみです。
ただ、チケット取りが熾烈を極めそうで…。(^▽^;;
by mikanpanda (2008-08-16 22:17) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。