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『二月大歌舞伎』夜の部(歌舞伎座) [演劇・ミュージカル]

一時、職場が歌舞伎座からほど近い場所にあったので、時間があいたときにふらっと見られる一幕見で歌舞伎を楽しむのが好きだった。
いまは歌舞伎座とは離れているところに住んでいるから、なかなかそういうわけにもいかないのが寂しいところ。
それでも、なんらかのかたちで年に一度ぐらいは歌舞伎を見たいと思っている。
と言いつつ、歌舞伎座そのもので歌舞伎を見るのは久しぶり。
市川海老蔵の襲名披露以来かも…。

今回見た歌舞伎座の『二月大歌舞伎』は「初代松本白鸚二十七回忌追善」と銘打たれたもの。
その夜の部を見てきた。
白鸚さんが亡くなられたのが1982年(昭和57年)なので、私は残念ながら舞台上での姿は拝見したことがない。
唯一見ているのは、数年前にCATVで放送していた松本幸四郎(放送当時の1978年は市川染五郎)主演のNHK大河ドラマ『黄金の日々』に出演している白鸚さん。
画面の中の白鸚さんは響く低音の持ち主で、さすがに存在感のある方だった。


寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)
中村富十郎、坂東三津五郎、中村橋之助、片岡孝太郎、中村芝雀ほか

口上
松本幸四郎、市川染五郎、尾上松緑、中村吉右衛門、中村雀右衛門

一谷嫩軍記
熊谷陣屋(くまがいじんや)
松本幸四郎、中村梅玉、尾上松緑、中村魁春、中村福助(中村芝翫代役)ほか

新歌舞伎十八番の内
春興鏡獅子
市川染五郎ほか


私のお目当てはなんといっても、染五郎の「春興鏡獅子」。
今回は白鸚追善ということで昼夜ともその縁の演目が並んでいるわけなのだけれど、最後の「春興鏡獅子」だけは白鸚・幸四郎ともに経験のない演目で、いわゆる「家の芸」ではない。
それをあえて最後に持ってきたのは、新しい高麗屋の門出を意味するのだそう。

「春興鏡獅子」というのは、江戸城の鏡曳きの余興のために踊りを命じられた若いお小姓の弥生が、踊っているうちに獅子の精に乗り移られ、やがては獅子の精として踊り狂う…という舞踏劇。
染五郎は、前半は文金高島田に振袖姿の清楚で美しいお小姓としてやや生真面目に踊りを披露。
一転、獅子に変貌した後半は立ち姿も凛々しく、毛振りも豪快。
楚々とした弥生もいいけれど、獅子頭をつけた染五郎のほうが断然好き。
今回は3階席からの観劇だったので、いつかは花道そばで見てみたいもの。
場数を踏むことでさらなる勇猛な獅子に変身してくれそう。

そして、この演目で忘れられないのがふたりの胡蝶の存在。
弥生から獅子に変わるのは大変身なので、衣装替えにそれなりに時間がかかる。
その間を、長唄のライブ演奏とともにつないでいるのが胡蝶の踊り。
今回その胡蝶を務めていたのが、中村梅丸と松本錦政という小学生ぐらいの男の子。
その踊りがとにかくみごと!
すでにご贔屓もついているのか、大向こうから「高砂屋!」「高麗屋!」と声がかかるほどの本格派。
とくに少し年上と思われる梅丸は、染五郎の弥生よりも色っぽいんじゃないかと思うほど。
錦政もそれは愛らしく、ふたりに目を奪われてしまった。

白鸚さんを忍ぶ口上では、背後の襖絵が故人が描いた松の絵を模写したものが置かれていた。
一般的な口上の場合、舞台の上手から下手までたくさんの役者さんが並ぶことが多いのに、このときは血縁者のみの小ぢんまりとしたもの。
それは、派手なことが嫌いだった故人の人となりに合わせたためなのだとか。

華やかさのある「寿曽我対面」、口上、幸四郎の見せ場がたっぷりの悲しい「熊谷陣屋」、締めは「春興鏡獅子」と盛りだくさんな4時間半(休憩込み)。
古典が多いのが気になったけれど、高麗屋の結束の強さと故人の人柄がしのばれる温かな会だった。
夜の部しか見ていないので、中村吉右衛門が口上だけだったのが心残り…。
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あぁ

歌舞伎座前を通るだけの私。
生の歌舞伎の迫力が伝わってきます。
4時間半お客さんを惹きつけるのは流石。
by あぁ (2008-03-01 01:57) 

mikanpanda

*あぁさん*
お返事遅くなってしまいごめんなさい。_(._.)_
不具合で書き込みできませんでした~。(T_T)

歌舞伎は見慣れないととっつきにくいかもしれないけれど、テレビの時代劇を見る感じの演目もあるし(今回はなかったけれど)、古典の場合はイヤホンガイドというのを借りるとかなりわかりやすくなるんですよ。
1000円ほどで1幕だけ見れる当日券(一幕見)もあるから、思ったよりも敷居は低いかも。
歌舞伎座を建て直す話も出ているので、機会を見つけてぜひ!
国立劇場では観賞教室なんてのもありますよ~(私は高校生のときに最初がこれでした)。

nice!もありがとうございました。(^^)/

by mikanpanda (2008-03-03 11:40) 

ayuna

こんばんは!
歌舞伎座が、会社の近くにあったからフラっと行くなんて、とってもかっこいいです。
歌舞伎は、私は見たことなくて、うちの両親が見に行った時に、何を言っているのか分からなくて(イヤホンで聞いてたらしいけど)、場所が遠くて、花道が見えなくて、でも、ご飯はおいしかったって、あまりいい感想を聞きませんでした。
私も今は、mikanpandaさんの話を、なんとなく聴くしかないけど、実際1回観に行ってみると違うんだろうなぁ。
歌舞伎、観に行くかっ!って言っても、私の友達は行きそうにないなぁ・・・。
by ayuna (2008-03-05 19:58) 

mikanpanda

*ayunaさん*
花道は、いい席じゃないと途中までしか見れないんですよね。(^^;
私も歌舞伎のときはよっぽどのことがないかぎりいい席を買わないので、花道はあまりちゃんと見たことがありません(笑)。
今回もそうでした。

歌舞伎は、最初は歌舞伎鑑賞教室に行くのがとっつきやすいかもしれませんね~。
あとは、知っているお話で行くとか。
私も歌舞伎のときは、かならず予習はしますよ!
じゃないと古典はやっぱりついていけないので。(^^;

nice!もありがとうございました。(^^)/
by mikanpanda (2008-03-07 18:31) 

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