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『コンフィダント・絆』(シアターBRAVA!) [演劇・ミュージカル]

三谷幸喜の新作舞台は、1961年生まれの彼と同年代の4人の男優で一緒に何かやろうということで持ち上がった企画なのだとか。
そこに紅1点として加わったのが、彼らより10歳ほど年下の堀内敬子。

1888年、パリ。
舞台として登場するのは、お世辞にもきれいとは言えないアトリエ。
そのアトリエは4人の画家が共同で借りたものだった。
世に出ることを夢見て集うのは、ゴッホ(生瀬勝久)、ゴーギャン(寺脇康文)、スーラ(中井貴一)、シュフネッケル(相島一之)…。
彼らはそれぞれがいろいろな理由でお互いを必要とし、微妙なバランスで友人として成り立っていた。
そこへ、カフェで働くルイーズ(堀内敬子)が絵のモデルとして現れたことがきっかけとなり、その均衡が徐々に崩れていく。

周囲に迷惑をかけながらもじつは天賦の才能に恵まれている生瀬・ゴッホ、自信家でありながら繊細な面をもつ寺脇・ゴーギャン、育ちがよくスマートで内面を表に出さない中井・スーラ、面倒見がよくいい人だけれど絵描きとしては凡庸なシュフネッケル、そして明るくはっきりした物言いのルイーズ。
バラバラの個性が織り成す群像劇は三谷幸喜の得意とするところ。
5人がぶつかったりひとつになったりして、前半は笑い満載でドタバタぎみに進む。
ところが、それが徐々に色を変え、男どうしの嫉妬や優越感、芸術家どうしの嫉妬や優越感が前面に出てきて、ほろ苦い結末へと流れていく…。
前半の明るさがあっただけに、それはとても重く響くものだった。

5人の俳優たちはそれぞれに存在感があり、味もあり、五者五様の魅力で楽しませてくれた。
とくに紅一点の堀内敬子は、ポイントポイントでピアノの生演奏に合わせて美しい歌声を披露。
ストーリーテイラーの役目も務め、ルイーズとしても女優としても男性陣を大きく支えていた。
『12人の優しい日本人』では”オバサン”という感じだった彼女が、今回はキュートで嫌味がないまったくの別人に変身。
『12人~』のときも、かわいらしいオバサンではあったんだけれどね(笑)。

人間どうしが”絆”をもつのは、どんなかたちであれ難しいものだと、このごろとみに感じる。
それがライバルにもなりえてしまう芸術家どうしならば、難しさは倍増するはず。
この舞台のタイトルになっている”コンフィダント”というのは、「心許せる相手」という意味なのだそう。
苦みの残る内容だけれど、見終わったあとに空虚さは残らなかった。
そこが三谷幸喜のうまさであり、こだわりなのだろう。


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コメント 9

三谷幸喜の作品は、独特ですね。
でも、私、好きですよ。どこが?っとつっこまないで下さいね。。
by (2007-06-03 01:00) 

nanayo

5/30の夜公演を観に行きました。
色んな部分での完成度の高い舞台に、大満足でした。
三谷さんの舞台は大好きです。
by nanayo (2007-06-03 13:50) 

mikanpanda

>犀川さん
コメントnice!をありがとうございます。
三谷幸喜はドタバタして笑わせつつ、最後はあったかい気持ちになるところが好きです。
そのドタバタにも伏線があり、ただ笑わせるだけじゃないひねりがあるんですけどね。
今回は、いつもに比べるとビターな作風でした。

>nanayoさん
はじめまして!(^^)/
コメントとnice!をありがとうございます。
私も同じ回を見ていました。(^^)
今回はとくに完成度が高い舞台でしたね。
ぜひ同じメンバーで再演してほしいです。
by mikanpanda (2007-06-03 17:34) 

あぁ

キャスティングだけでも興味をひかれます。
生瀬・ゴッホが一番観たいです。
by あぁ (2007-06-04 01:10) 

mikanpanda

>あぁさん
豪華なキャスティングしたよォ~。
生瀬さんは、ややエキセントリックで、神様に絵の才能はもらたけれど、ほかの能力はどこかに大方忘れてきてしまったゴッホにぴったりでした。
三谷さんが書くと、人って誰もがどこか憎めない存在になるところが好きです。

nice!もありがとうございました。(^^)/
by mikanpanda (2007-06-04 17:10) 

舞台を観には行けませんが、ここで読んでいるだけで
少し雰囲気を味わえます。
by (2007-06-05 00:24) 

mikanpanda

>とわさん
私のブログは自分の覚え書きみたいなものなのですが、それでも、少しでも場の雰囲気を感じていただけたのならとてもうれしいです。(^^)
nice!ともどもありがとうございました。
by mikanpanda (2007-06-05 18:40) 

じあむ

三谷さんの作品は好きですね~♪
舞台はなかなか行けませんが、
日記を読んでこの作品は観に行きたいな~と思いました。
by じあむ (2007-06-08 19:19) 

mikanpanda

>じあむさん
三谷作品は外れがなくていいのですが、チケットどりが大変で…。(^^;
今回の舞台のためにも、かなりの時間にわたって電話しまくりました。
でも、それだけの価値のある内容でした。(^^)

nice!もありがとうございました。(^^)/
by mikanpanda (2007-06-10 16:25) 

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