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『身毒丸 復活』(シアター・ドラマシティ) [演劇・ミュージカル]

藤原竜也が、蜷川幸雄演出のもと『身毒丸』(脚本=寺山修二・岸田理生)で舞台デビューしたのが1997年。
2002年にも再演され、そこでファイナルとして封印…されるはずだった…。
ところが、アメリカのジョン・F・ケネディセンターからの招聘を受けたことがきっかけで、その封印は解かれることに。
『身毒丸 復活』として帰ってきた。

というわけで再々演となる藤原竜也版の『身毒丸』だけれど、過去2回の公演を私は見ていない。
なのに、藤原竜也の前に身毒丸を務めた武田真治版は、1995年に彩の国さいたま芸術劇場で見ている。
そのときの印象は、とにもかくにも白石加代子!
10年ちょっと前の出来事なのに、彼女のすごさに圧倒された記憶が鮮明に残っている。
そして、念願かなっての藤原竜也版はというと…。

身毒丸(しんとくまる/藤原竜也)は幼いころに亡くした母が忘れられず、ひと目会いたさに町をさまよい続ける日々を送っていた。
そんな身毒丸の父(品川徹)は、家というのは、父・母・子供がそろってはじめて成り立つものだという信念のもと、母を売る店で母を買うことにする。
父に連れられて店に出向いた身毒丸は、10人の母候補のなかのひとりの女から目が離せなくなる。
それは撫子(白石加代子)という元旅芸人の女だった。
身毒丸の父はその撫子を買い求めることに決め、彼女が拾い育てているせんさく(渡部駿太)とともに四人家族が出来上がる。
けれども、身毒丸は撫子を母と認めず、いつまでたっても懐こうとはしない。
そのうえ夫には、妻ではなく家族を構成する母の立場でしか見てもらえず、撫子にとって安住の地だったはずの家が彼女を苦しめるようになっていく…。


グラインダーが音を立てて火花を散らせるなか、舞台奥から物の怪のような人たちがゆっくりと進み出てくるシーンで物語は始まる。
冒頭からあっという間に怪しい空間に引き込んでくれる、武田真治版でも印象に残った演出。
言葉でしか知らない「アングラ」の世界観を垣間見る思い。

白石加代子は、いい意味で妖怪だと思う。
息子を思う優しい母、夫の支えになりたい妻、なさぬ仲の息子に恋慕を抱く女…。
そのときどきで表情は千変万化。
そして紡ぎ出す音色も表情とともに瞬時に変化していく。
圧倒的な存在感は変わらず。
でも、カーテンコールで見せる表情はときにどこか少女のよう。
そんな白石加代子に、25歳という若さにもかかわらずついていける藤原竜也もおみごととしか言いようがない。
舞台というのはひとりが突出しては成り立たないものなのだから。

蜷川作品にしては1時間半と短めだけれど、とても濃密な舞台。
これでもかと「女」という性を見せつけられおどろおどろしさもあるのに、どこか神々しい。
武田真治版のときは「負」や「陰」の印象がもっと強かったはずなのに、今回は悲劇のなかにも未来に少しだけ希望がもてたのは、十数年の時が流れ私の感じ方が変化したのか、それとも身毒丸が藤原竜也だったからだろうか。
できることならば、これまでの『身毒丸』をすべて並べてみたい。
もっとも、それがかなわないのが舞台の良さで、舞台が生き物である証しなのだけれど。

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『身毒丸 ファイナル』 icon


タグ:演劇
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コメント 6

犀川

舞台が生き物である証し・・・何となくわかる気がします。
by 犀川 (2008-03-18 16:05) 

ねこかど

藤原竜也さんって、まだ25歳なんですね!とっても以前から顔を見ている気がするし、評価もとても高いからなんだかもう少し年上に感じていました。
同じ舞台でも、きっと見る時の自分の年齢も感想にかなり影響するだろうな、って思います。

きり番カード、ちょっとお待ちくださいね!ごめんなさいね、なつのいい写真を準備しますので!
by ねこかど (2008-03-18 18:31) 

ayuna

mikanpandaさんのブログを読んでると、私が今まで関心がなかった事でも、興味がわいてきたり、パンダを見に行きたくなったりします。もう少しで、時間ができそうだから、なにか一つでも真似てみたいです。
舞台は生き物か。生で実感してみたいです。彩の国さいたま芸術劇場、私の家からでもいけそうだしっ♪自分の好きなもの、楽しみ方をもっと見つけよう!
by ayuna (2008-03-18 20:41) 

あぁ

白石加代子さんというだけで
ゾクゾクします。
あの額からツーと血が流れたシーンを思い出すんです。
by あぁ (2008-03-19 01:44) 

ねこかど

再びお邪魔しまーす。
遅くなってスミマセン。きり番カードを作成しました!おヒマな時に見にいらしてくださいね。
by ねこかど (2008-03-19 17:57) 

mikanpanda

*犀川さん*
同時期の舞台でも、日によって、さらに会場によってまた違うこともあるので、生物だなぁと思います(笑)。

nice!もありがとうございました。(^^)/

*ねこかどさん*
そうなんです、彼はまだ25歳なんです。
『身毒丸』で舞台デビューしたのが15歳ですからねぇ。
一度、都内の劇場のロビーで、超至近距離でお目文字したことがあるのですが、Tシャツにジーンズというカジュアルな出で立ちにもかかわらずものすっごいオーラでしたよ。(*^-^*)
10年の間に私の生活環境はかなり変わったので、そのあたりも感じ方に影響しているのかもしれませんね。

キリ番カードありがとうございました。
さっそくいただきにうかがいますね♪

nice!もありがとうございました。(^^)/

*ayunaさん*
ayunaさんの年ごろだとこれからいろいろと環境が可能性もあると思うので、自分の自由な時間がもてるときに、ぜひいろいろと楽しみを見つけてくださいね!
私の場合は、道楽ばかりで身になっているかといえば微妙だけど…。(^^;

nice!もありがとうございました。(^^)/

*あぁさん*
白石加代子さんは、ほっんとに妖怪です。
今回の撫子役を演じられる女優さんはそうそういないでしょうねぇ。

nice!もありがとうございました。(^^)/


by mikanpanda (2008-03-19 20:40) 

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